特別対談

金ヶ江悦子様にお話をお聞きしました。

藤平信一 心身統一合氣道会 会長

東京工業大学 生命理工学部 卒業
慶應義塾大学 非常勤講師・特選塾員
幼少から藤平光一(合氣道十段)より指導を受け、心身統一合氣道を身に付ける。心身統一合氣道の継承者として、国内外で心身統一合氣道を指導・普及している。

金ヶ江悦子 様

2010年度ミス・インターナショナル日本代表
トータルビューティーディレクター

 


自分の人生は自分の責任で生きていく

藤平信一会長(以下、藤平):金ヶ江さんは、西成活裕先生(会報誌第19号に登場)のご紹介で心身統一合氣道の稽古を始められたのでしたね。

金ヶ江悦子様(以下、金ヶ江):そうです。私は現在、モデルの育成やミスコンテストの日本代表を目指す方を指導しています。色々な方を見ているうちに、「理にかなった動きは美しい」と感じるようになって、合氣道に興味を抱くようになりました。そんなときに、西成先生にご紹介を頂きました。

藤平:稽古を始められて、どんなことを感じましたか。

金ヶ江:ただ立っているだけでも、いわゆる「氣が出ている状態」だと輝きが変わります。発するエネルギーが違うのです。会長が稽古でよく言われている「足が地に着く」状態が、心に余裕を持たせて、それが豊かな表現に繋がり、その人の発するオーラも変わってくる。その変化にいつも感動しています。

藤平:金ヶ江さんがミス・インターナショナルの大会に出場しようと思ったきっかけを教えて頂けますか。

金ヶ江:当時、お芝居やタレントなど芸能の仕事をしていて、マネージャーさんから「ミスコンテストに出てみないか?」と言われて、他薦で出たのがきっかけです。ミスコンは「女性達の戦い」だと思っていたので興味が無かったのですが、運良くファイナリストに選ばれ、私にテレビの密着取材がつくことになりました。毎年、密着される方が優勝していたので、周囲の期待が高まりました。これをきっかけに、大阪から上京。東京の自宅に初めて来たのは、引っ越し屋さんではなくカメラ・クルーでした。

藤平:まさにシンデレラ・ストーリーですね。

金ヶ江:大会当日はいい氣になってステージで立っていましたし、「私、優勝するから見に来て!」と、両親や友達、色々な人をお招きしました。最後のドラムロールが鳴り、自分の名前が呼ばれると思っていたら、なんと全然違う方にスポットライトが当たり、結果は落選。その時に、自分の何が悪かったのかを反省できれば良かったのですが、私がしたことは「文句を言う」ことだったのです。自分が落ちたことを認められず、他人のせいにしてしまいました。周囲の仲間達も同調して、皆が不平不満を持ち寄るような「場」で過ごすようになっていました。

藤平:その後はどうされたのですか。

金ヶ江:ミス・インターナショナルは駄目、ドラマやレギュラー番組も終わり、所属会社もマネジメント契約を終了。夢を描いて東京に出てきて頑張ろうと思っていた矢先に、仕事が完全に無くなってしまいました。
 それで、色々な事務所に面接に行ったのですが、「君みたいな地方から出てきた中途半端な子、良くいるんだよね。タレント?モデル?役者?結局、何がしたいの?」と言われて、自分がどうしたいのか分からず、断られ続ける日々でした。毎日自分を否定されているような氣持ちになり、だんだん自分を見失い、夢もなくなって落ち込んでいました。

藤平:どん底の状態から立ち直ったきっかけは何だったのでしょうか。

金ヶ江:時間だけはあったので、「原点に戻ろう」と思い、農業を始めました。土いじりをして心を癒やそうと、茨城県に通ってお野菜を作っていました。色々な野菜にチャレンジしましたが、最初に育てた大根のことが忘れられません。その大根は、見た目もとても美しく、葉っぱの上でテントウムシが遊んでいて、その光景は輝いていました。ふと、その横に目をやると腐ってしまった大根がある。隣り合わせの「立派に育った大根」と「腐ってしまった大根」を見比べて、同じように育てていたはずなのに、いったい何が違ったのだろう、という疑問が湧いたのです。それで、ふと「ああ、私も一緒だ」と感じたのです。

藤平:文字通り「腐ってはいけない」ということですね。

金ヶ江:はい。夢もない、お金もない、人脈もない、肩書きもない。当時の私には何もありませんでしたが、ミスコンテストで、自分にやれることがまだたくさんあるのではと氣がつきました。他薦で出たとしても、行動したのは自分です。他薦だからと総てを人のせいにして、結局、自分が無い状態だったのです。だから心も見た目も環境も腐った状態。自分の人生は自分の責任で生きていく。「もう一回やり直そう」と、今度は自薦で応募しました。

藤平:一回目と二回目では、チャレンジの目的が完全に違ったわけですね。そして、ミス・インターナショナル日本代表になった。

金ヶ江:そうなのです。ですから、今となっては、一回目に落ちた経験が本当に良かったです。それがなければ、どんな人間になっていたかと思います。余談ですが、賞を頂いて新聞に掲載された瞬間に周囲の反応が変わって「君なら絶対にやると思っていたよ!うちに来ないか?」なんてお誘いを頂いて。これが世の中なのかと思いました(笑)。

心を磨くために

藤平:こうしてお話をお聴きしていると、金ヶ江さんにとっての「美しさ」は外見だけでなく、内面から出てくるものを指しているように思います。

金ヶ江:稽古での言葉をお借りすれば「心が身体を動かす」です。ミスコンテストのトレーニングというと、外見だけ磨いていると思われがちなのですが、日本代表を目指す子たちを指導する際は、心の面と身体の面の両方からアプローチしています。自身の失敗談を踏まえて心身を磨いて人間力を向上させていくトレーニングを心掛けています。ですから、心身統一合氣道の稽古がすごく活きています。

藤平:ミスコンテストにおいて、心の状態はどんなところに表れるのでしょうか。

金ヶ江:姿勢、歩き方、スピーチ等、表現総てに表れます。コンテストですから人と競う性質のものではあるのですが、人を蹴落として勝つ争いではないので、自分自身の良いところをいかに伸ばして表現できるかが鍵です。そこで、オーラがあって最も魅力的に映った人が、審査員の目に留まって優勝します。

藤平:身体には形がありますが、心には形がありません。心を磨くために、金ヶ江さんはミスコンテストに出場する皆さんにどのような指導をされるのですか。

金ヶ江:私がいつも伝えているのは「心=言葉+態度」です。心の状態は言葉と態度で表れると思っています。心が下を向いているとき、言葉はネガティブになり、態度(例えば姿勢)が崩れたりしませんか。心の状態が上を向いているというのは、自分の責任で生きるということです。自分の責任で人生を生きている人は、どんな事があっても絶対に人のせいにはしません。そしてこの環境のおかげで今がある、この経験のおかげで今自分は頑張れている、など常に前向きな言葉を発し、心に余裕のある態度、つまり姿勢が整っています。どうしても心がネガティブになってしまうときは、まずは自分の発する言葉と態度を変えてみる、それだけでも効果はあります。当時の自分に教えてあげたいですね(苦笑)。

藤平:それは、人間としての「たたずまい」ではないでしょうか。スキルを磨くことは一般的によくされますが、たたずまいを磨くことは容易ではありませんね。

金ヶ江:そこを磨いていくために、私は「感じる」ことを大切にしてもらっています。相手が感じていることは絶対に否定しない。そして自分が日々感じたこと、心が動いた瞬間のことを書き留めて頂くようにしています。

藤平:なるほど、その時が「氣が出る」瞬間だからですね。

金ヶ江:そうですね。私にとって「美」の定義は「感動」「心が動く」ことです。「美」は、人を好きになるのと同じように、皆、価値観が違い、それぞれの基準で決まります。でも、日常生活の中で心が動く瞬間、つまり感動することは年齢も国籍も、障碍も関係なく、どんな人でもありますよね。その日々の感動が「美」の力であり、感動体験をたくさん作っていくことこそが人生をより豊かにしてくれると思うのです。
 私の仕事である「美」のサポートは、その人が「私にだってできる!」とか「こんな目標ができた!」とか「わぁ、素敵だな」など、良いところを発見したり、経験したりすることで、心が動く瞬間をたくさん作っていくことだと思っています。

藤平:いま、障碍のお話がありましたが、金ヶ江さんは、聴覚障碍をお持ちの方をサポートなさっていましたね。

金ヶ江:はい。あるとき、私のセミナーに聴覚に障碍をお持ちの方がご参加くださいました。最初はボディーランゲージでなんとか会話をしていたのですが、受講後は少し言葉を発するようになられて、その後「もっと自分を磨きたい」ということで、3年越しで聾啞の方のミスコンテストに挑戦することになりました。見事に日本代表になって、世界大会へ行くサポートもさせて頂きました。その時には見違えるほど自信に満ち溢れ、言葉数は当初よりもかなり増えたように感じました。人がこれほど変わっていく姿に触れて、私も感動して力をたくさん頂きました。

藤平:「氣を出す」ことを身につけると、人生が変わりますね。

金ヶ江:本当にそう思います。実はそういう方が結構いらっしゃるのです。世界一位になった方、スピーチコンテストで優勝した高校生、パリコレに出た方、アナウンサーになった方。とても地道なプロセスですが、夢を叶える方が周りに増えてきました。

藤平:心身統一合氣道会でも、全盲の方が初めて指導員になる予定です(注:2020年5月に指導員となりました)。この方は、健常者と同じように昇段審査を受けて二段になりました。何と、投げるだけではなく、受身も取ります。実際に体験すると分かりますが、健常者が目隠しをして受身を取ると、ものすごい怖さがあります。この方は、目が見えない人たちが「氣を出す」ことを出来るようにサポートするために、指導員を目指しているようです。

金ヶ江:格好いいですね。そういう方々は研ぎ澄まされて、接していて感じるのは、ものすごく感性が豊かなことです。

藤平:「自信が持てない」と悩んでいる子供達がいます。最後に、そんな子供達にメッセージを頂けますか。

金ヶ江:「努力すること」に尽きると思います。努力が心の筋肉を鍛えていきます。一生懸命努力するからこそ、自信になって人に伝わっていきます。私はミスコンテストを通じて、それを学びました。どんな小さなことでもいいので、自分自身が決めたことに対して精一杯の努力をコツコツする。例えば、一日に腹筋5回でもいい。たった5回でも「1年間毎日欠かさず行う」と自分で決めて行動すると、達成したときに自信になりますよね。毎日トイレ掃除をするでもいい。テストで誰よりも頑張ったと言えるくらい勉強するでもいい。自分との約束を守り、諦めないで努力を続けること、それが「自分を信じること=自信」になると信じています。

藤平:本日は有り難うございます。

『心身統一合氣道会 会報』(第31号/2020年4月発行)に掲載

一生懸命努力するからこそ、自信になって人に伝わっていきます。

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当会では「合気道」の表記について、漢字の「気」を「氣」と書いています。
これは“「氣」とは八方に無限に広がって出るものである”という考えにもとづいています。


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