特別対談

朝田浩司先生にお話しをお聞きしました。

藤平信一 会長

東京工業大学 生命理工学部 卒業
慶應義塾大学 非常勤講師・特選塾員
幼少から藤平光一(合氣道十段)より指導を受け、心身統一合氣道を身に付ける。心身統一合氣道の継承者として、国内外で心身統一合氣道を指導・普及している。

朝田浩司 先生

医療法人朝田歯科 院長


 医療法人 朝田歯科の院長の朝田浩司先生は、藤平光一先生に学ばれ、現在も心身統一合氣道の稽古を継続なさっています。藤平光一先生との思い出や、歯科医師としてどのように氣を活用なさっているかお話をお聴きしました。

藤平光一先生との出会い

藤平信一会長(以下、藤平):朝田歯科は今年で設立40周年、先日の記念行事では私が講演をさせていただきました。

朝田浩司先生(以下、朝田):その節は、たいへんお世話になりました。

藤平:スタッフの皆さんも、長年の患者さんたちも、氣が出ている方々ですね。朝田先生が氣の出ている方だからでしょうね。

朝田:ありがとうございます(笑)。

藤平:設立して40年ということは、開業なさったのは20代の頃ですか。

朝田:28歳の時です。

藤平:藤平光一先生と出会ったのはその頃でしょうか。

朝田:藤平光一先生を初めて知ったのは開業する前で、まだ私が徳島大学に籍を置き、日本歯科東洋医学会に参加したときのことでした。歯科医師の故・福岡明先生(会報誌第10号の特別対談に登場)が「デヴィッド・ボームの明在系と暗在系という、肉眼で確認できる部分とそうではない部分があるのだよ」というお話をされていて、目に見えない体への作用に関心を持った私は「ぜひ先生のクリニックを見学させてください」とお願いしました。福岡先生は快く受けてくださり、後日見学に行きました。そこに患者さんとして藤平光一先生がクリニックに来られていることをお伺いしました。藤平先生のお写真がおかれていてプロ野球の王貞治さんに一本足打法を指導されたことや、氣圧法で福岡先生の体調が良くなられたことをご説明くださいました。

藤平:それがきっかけで心身統一合氣道の稽古を始められたのですか。

朝田:このときはそれだけで、さらに後日、徳島から大阪に戻ってきて開業の準備を始めた頃に、たまたま別の会合で藤平光一先生のお話が出て、当時、西中島南方にあった光心館道場をその方に紹介していただきました。何と、私が見学に行ったまさにその日に、たまたま藤平先生が大阪に来られていたのです。

藤平:それは本当にご縁ですね。

朝田:福岡先生のお名前を出したからでしょうか、藤平光一先生が直接私にお話しをしに来てくださいました。その時、「来年から大阪で(当時の)氣圧療法学院を始めるので来ませんか」とお声かけいただき、その二期生として始めることになりました。

藤平:藤平光一先生が二週間に一度、東京から大阪へ指導に行っていた時代ですね。

朝田:そうなのです。直接ご指導いただく時間は、私にとって本当にありがたい珠玉の時間でした。藤平光一先生は、どんな質問をしても、すぐに答えてくださいました。
 その後、「ハワイの道場で氣祓いをするから一緒に来ないか」とお誘いをいただきました。その頃は「開業したてでお金もないし、どうしよう?」という感じだったのですが、なんとかやり繰りして行くことになりました。空港で藤平光一先生にお会いしたら、「朝田君、やる氣があれば何だって出来るのだよ」と言われたのを鮮明に覚えています(笑)。

藤平:そんな藤平光一先生と一緒に過ごして、最も印象に残っていることは何ですか。

朝田:心の切り替えの早さですね。ある日、どうやらトラブルがあったようで、道場に到着してから藤平光一先生は内弟子さんを電話で叱っていました。ところが、氣圧療法学院の授業の直前になるとニコッと笑って、「さあ、始めるよ」と、それまでのことが全くなかったように心を切り替えていました。

藤平:私憤で感情的に怒っているわけではないからでしょうね。

朝田:そうですね。藤平光一先生は私にとって憧れで、自分がこうと決めた道を溌溂颯爽と歩む生き様に接して、私もそうありたいと思いました。

生命力を発揮する

藤平:朝田歯科では、質の高い治療技術だけではなく、目には見えない自然治癒力や生命力を大事にお考えになっているようです。どんなときにその力が最も働くとお考えですか。

朝田:それこそ心身統一した状態で治療をするときです。氣が出ている状態で患者さんと接すると、患者さんもオープン・マインドになってくれます。すごく良い人間関係ができると、そういった力が発揮することを現場で実感しています。心持ちも大事で、同じような病態であっても、物事にこだわらない、前向きの患者さんは早く治ると感じています。

藤平:藤平光一先生は「人間は不安になると生命力が働かなくなる」と言われていました。「医者の本分は患者が安心するようにすることなのに、昨今は不安ばかり与える医者が多い」と怒っていました(笑)。なるほど、不安な状態を解消するためにエネルギーを消費してしまったら、回復するために使えなくなってしまいますよね。

朝田:そういうことですね。「生命力を発揮する」とは、治る方向に適切にエネルギーが使われている状態だと思います。

藤平:だからこそ、朝田先生は人間関係を大事になさっているわけですね。信頼できない先生の治療を受けるとしたら、不安でいっぱいになります。
 ところで、朝田歯科では治療だけではなく、予防に力を注いでいるそうですね。

朝田:予防歯科にシフトしたのは、今から25年ぐらい前だったと思います。いくら良い治療をしても、期間が経つと、年齢と共に悪くなってしまうのです。基本的に大きな介入をしない方が、結局は歯が長持ちすることが体感的に分かった時期があって、できるだけ歯科医師が手を下すのではなく、衛生士さんレベルでしっかり予防をする方が、医療費も安くつくし、患者さんの人生にとっても幸福であることを確信しました。それまでは、悪くなった時しか患者さんは来なかったのですが、今では美容院に行くような感じで、定期的に来てくださるようになりました。

藤平:だからこそクリニックが、そこにいるだけで心地良い、氣が出る空間である必要があるわけですね。それにしても「美容院に行く感覚」とは驚きました。

朝田:例えば、アメリカでは歯科に行く日をだいたい年間で4回ぐらい先まで確保して、その日にはもう仕事も入れない、そういう文化があるのです。

藤平:そのくらい歯のメンテナンスに重きを置いているのですね。記念行事での朝田先生のご講演で触れておられましたが、歯周病は口の中の感染症で、歯を失う原因の第1位、歯周病の原因菌に感染すると様々な疾病の発症リスクが高まり、誤嚥性肺炎や他の疾病との合併症の元になるとか。それだけ重大なことなのに、口の中には意外と無頓着な感じがします。自分の口の中は、直接見ることができないからでしょうか。

朝田:そうですね。口の中を直接見る機会もあまりないですし、歯周病自体の自覚症状があまりなく進行する病気ということもありますね。意識高くメンテナンスする方も増えてきましたが、まだこれからですね。

藤平:「噛む」ことは認知症にも関わりがある、と言われていましたね。

朝田:それについては統計が出ています。頭蓋骨を通じて物理的な力が脳に伝わるのは、噛むという運動しかないのです。脳内の血液を心臓に戻す、その働きというのは咀嚼することで側頭筋が動いて、こめかみの辺りにある翼突静脈叢がスポンジを絞るような感じに働き、心臓に血液が戻っていくのです。

藤平:噛むことは筋力トレーニングなのですね。それによって脳の血流にまで影響があるとは……。よく噛もうと心に誓いました(笑)。
 あと、歯科でありながらフレイル(※加齢とともに運動機能や認知機能等が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態)の予防の取り組みをされているのが非常に印象的でした。

朝田:フレイルの中でも、口腔領域に関してはオーラルフレイルという表現を使います。典型的な例としましては、「ある程度は噛めるのだけれども、飲み込みが上手くいかない」という人がすごく増えてきています。飲み込みが悪くなると誤嚥性肺炎のリスクもすごく高くなるのです。

藤平:なるほど、噛むことができても飲み込めなかったら食べる気力を失ってしまいます。歯科を中心にトータルケアをなさっているのですね。
 朝田先生は訪問診療にも精力的に取り組んでいるとお聞きしました。訪問診療はクリニックまで来られない方を対象にされているのですね。

朝田:そうです。これは国の方針でもあって、歯科の訪問診療を充実させないと食事が摂れないからです。また、口内のケアができていないと、脳梗塞や心筋梗塞など、様々な病気の発症率も高くなってしまいます。そのため、厚生労働省から、対応できるクリニックはやってください、という方向になっているのです。ただ、衛生士さんがいないとオーラルケアはできないので、それなりの人数を確保できないと機能しません。

藤平:家族では行き届かない部分がありますから、とても大事なご活動ですね。
 それと、朝田先生は若い歯科医師の育成にも力を入れていらっしゃるとお聞きしました。どのように指導なさっているのですか。

朝田:一般社団法人 歯科業務標準化機構という組織があり、そこにはベテランの先生がたくさんいらして、自分の得意分野でそれぞれセクションに分けて、月一回、指導をしています。私は「義歯」を担当していまして、若い先生方にお伝えしています。

藤平:記念行事で私がお話しした患者さんは、朝田先生の義歯の技術が飛び切り優れていて、自分の歯のように何でも噛めると言われていました。

朝田:義歯にはすごく難しい部分があって、顎の骨がしっかりしている間に最初の義歯として良いものを作っておけば基本的にうまく行くのですが、顎が衰えてからでは難しくなるのです。30年以上も上下総義歯でそのまま使っている患者さんがいらっしゃいますが、若くてまだ顎がしっかりしている間にきちっとしたものを作ったので、その顎の骨の減り方が全体的にゆっくりで、ガタつくことがないのです。顎の骨が片減りして、そこの部分だけ骨が減ってしまうと治療は難しくなります。

藤平:ところで、日頃、朝田先生は光心館道場(大阪)で稽古なさっているのですね。

朝田:そうです。山本晶一先生(2025年9月逝去)の時間に出ています。話芸も含めて、私は山本晶一先生のクラスが大好きです(笑)。クラスの皆さんも楽しい方ばかりです。昨今ではようやく道場でも上の方の年代になったと思いますが、数年前までは私の年齢がちょうどまだ中間ぐらいでした。70歳以上で元気な人がたくさんいて、本当に素晴らしい場だと思います。

藤平:そんな光心館道場が、今年で設立50周年を迎えます。当時、関西地区本部長であった山本晶一先生を中心に、多くの皆様のご協力やご支援をいただいて、西中島南方から天神橋筋六丁目に移転して現在の立派な道場ができました。
 私たちも、心身統一合氣道の活動を通じて、一生、心身共に健やかに過ごせる人が増えるように全力を尽くして参ります。

『心身統一合氣道会 会報』(52号/2025年10月発行)に掲載

氣が出ている状態で患者さんと接すると、患者さんもオープン・マインドになってくれます。

特別対談一覧

  • 2026年03月31日(火)

    朝田浩司先生 特別対談

     医療法人 朝田歯科の院長の朝田浩司先生は、藤平光一先生に学ばれ、現在も心身統一合氣道の稽古を継続なさっていま …

  • 2026年01月20日(火)

    田中慶子様 特別対談

    同時通訳者として、ダライ・ラマ、テイラー・スウィフト、ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカムなどの通訳をして来られた …

  • 2025年10月31日(金)

    中谷敏先生 特別対談

    大阪府済生会千里病院の院長の中谷敏先生は、心身統一合氣道の稽古を熱心に継続されて、現在参段。仕事や日常生活でど …

  • 2025年03月30日(日)

    宮原禎様 特別対談

    世界最高精度の睡眠測定技術を搭載したウェアラブルデバイスとデータ基盤を開発し、睡眠データと様々な医療データを掛 …

  • 2025年01月30日(木)

    米村敏朗様 特別対談(完全版)

    元・警視総監で、内閣危機管理監や内閣官房参与をお務めになり、東京2020オリンピック競技大会組織委員会の理事・ …

その他の特別対談一覧

無料体験・見学のご予約は、お近くの道場・教室まで
検索はこちら

当会では「合気道」の表記について、漢字の「気」を「氣」と書いています。
これは“「氣」とは八方に無限に広がって出るものである”という考えにもとづいています。


top